・熱帯魚の病気と治療薬

病気の原因を取り除く
金魚・熱帯魚の病気
薬浴時の注意点
観賞魚用治療薬一覧

病気の原因を取り除く
飼育している魚が病気になった時、治療と同時に病気の原因を取り除き、再発及び他の魚への感染を防ぐ必要があります。

  • 水質および水温の急激な変化によるストレス
    新規生体の他所からの導入や、水換えにより水質及び水温が急激に変わった場合、生体はダメージ(PHショック、温度ショック)を受け弱ってしまいます。
  • 水質悪化によるストレス
    水質悪化は魚の体力を奪い、病気への抵抗力を無くします。水質悪化の原因としては、餌の与え過ぎや、水量不足(過密)、フィルターの目詰まりなどが考えられます。
  • 感染した生体の持ち込みや、病原菌が含まれた水、水草の持ち込み
    新規の生体や水草は、導入前にトリートメントを行い、病気に感染していない事を確認の上、導入します。また、水草の場合は農薬や害虫の付着があり得ますので、トリートメントは必須です。
  • 外傷から細菌の感染
    魚体に傷がある場合、そこから細菌感染する事があります。当方の飼育している金魚が、白点病で底砂に体を擦りつけるようになり体表に傷ができ、そこから細菌感染し穴あき病を併発した事があります。
    その他、傷ができる原因としては、寄生虫によるものや、生体同士の喧嘩、網で無理に掬った場合などが考えられます。

金魚・熱帯魚の病気

白点病
症状
寄生虫により、体表やヒレが白い点で覆われてしまう病気です。
感染初期では、白点を目視することができませんが、魚がかゆがり、底砂などに体をこすりつけている場合、感染している恐れがあります。悪化すると体一面に寄生が進み、白点が目視できるようになります。ストレスによって体表の粘膜が荒れているときに感染しやすいようです。
寄生虫のライフサイクルは、寄生、シスト(被嚢)、増殖、仔虫、寄生というサイクルを繰り返します。魚体に寄生している時期とシスト化している時期は薬物耐性が強い為、魚体から離脱した成熟虫と仔虫(浮遊している時期)を薬品により駆除します。また、一般に白点病の治療は水温を28度以上にすると良いと言われていますが、これは高温による寄生虫の駆除が目的ではなく、温度上昇により寄生虫のライフサイクルを早め、浮遊状態の回数を増やし、薬品を効きやすくする事が目的です。ですので、投薬を行わず、温度上昇のみ行うのは逆効果です。
なお、海水魚の白点病は原因となる病原虫が異なる為、治療法が異なります。
治療薬
グリーンF、ニューグリーンF、グリーンFリキッド、メチレンブルー、グリーンFクリアー、アグテン

白雲病
症状
体表やヒレに白いモヤモヤした物が付着し、進行すると全体を覆います。このモヤモヤは、寄生虫により傷つけられた体表より分泌される粘液です。水質の悪化とあわせ、水温の変化の激しい時期に発症しやすいようです。また白雲病が治った箇所が黒くなる黒斑病になる事があります。
治療薬
グリーンF、ニューグリーンF、グリーンFリキッド、メチレンブルー、グリーンFクリアー、アグテン

エピスチリス症(ツリガネムシ病)
症状
原生動物の繊毛虫であるエピスチリスの寄生が原因と言われています。他の病気や怪我でできた傷に寄生しやすいようです。
体表に白点が生じ、次第に大きくなり、その部分のウロコが脱落していきます。
治療薬
グリーンF、ニューグリーンF、グリーンFリキッド、メチレンブルー、グリーンFクリアー、アグテン

尾ぐされ病・口ぐされ病・エラぐされ病
症状
カラムナリス菌という細菌の感染が原因と言われています。発症した部位により病名が変わります。尾ヒレに感染した場合は、ヒレが先から白濁し、骨の部分だけになったり、酷ければヒレその物が無くなってしまいます。口に感染すると、患部がただれ、綿がついた様になります。
エラに感染した場合、致命的で呼吸困難になり、死んでしまいます。
治療薬
観パラD、グリーンFゴールドリキッド、グリーンFゴールド顆粒

穴あき病
症状
初期では、ウロコ1枚ぐらいがに充血が現れます。進行すると充血の範囲が広がり、やがて鱗が落ち、筋肉が露出し体に穴があいた状態になりなす。
エロモナスサルモニシダとよばれる細菌の感染によっておこると言われています。なお、この細菌は低水温を好みます。
治療薬
観パラD、グリーンFゴールドリキッド、グリーンFゴールド顆粒

松かさ病
症状
ウロコの付け根に水ぶくれができる事により、ウロコが逆立ち、松かさのようになります。
エロモナスハイドロフィラという細菌の感染によって発症すると言われています。
この病気は水質が悪化したときに発症しやすいようです。
治療薬
観パラD、グリーンFゴールドリキッド、グリーンFゴールド顆粒

赤班病
症状
エロモナス ハイドロフィラという細菌の感染によって発症すると言われています。
体表に皮下出血が現れます。進行するとウロコがはがれたり、松かさ病を併発します。
治療薬
観パラD、グリーンFゴールドリキッド、グリーンFゴールド顆粒

水カビ病
症状
体表に綿のようなものが付着し、放置すると衰弱死する。
他の病気や怪我でできた傷にカビが付着し発症します。
治療薬
グリーンF、ニューグリーンF、グリーンFリキッド、メチレンブルー、グリーンFクリアー、アグテン

ウオジラミ(チョウ)寄生症・
イカリムシ寄生症
症状
ウオジラミは、大きさは5mm以下で成虫ならば肉眼で確認できます。
イカリムシは、大きくなると10mmにもなり、肉眼で確認できます。
いづれも体表に摂り付いて体液を吸い取ります。放置すると衰弱死します。また、傷口より他の感染症を併発する恐れがあります。成虫はピンセットですべて取り除き薬浴します。場合によっては卵、幼虫の駆除の為、飼育水の全量水換え、ろ材の交換が必要になります。
治療薬
リフィッシュ

転覆病
症状
腹部を上にし、水面付近に浮いた状態になります。
消化不良やストレスが原因で浮き袋が機能しなくなる事が原因と言われています。
水温を28℃程度まで上げることで改善する事もあるようです。また、給餌後に転覆するようであれば、餌の種類を変えてみる等で様子をみます。
治療薬
なし

薬浴時の注意点

  • 多くの薬剤の使用上の注意に「海水魚や古代魚、大型ナマズ類には使用しないで下さい。」との記載がありますが、小型でもナマズの仲間やエビのいる水槽には使用を控えた方がよいでしょう。
  • 多くの薬剤は水草を枯らします。水草水槽では、病魚を隔離して薬浴することをお勧めします。
  • フィルターから活性炭などの吸着系ろ材を取り外します。吸着系ろ材が薬品を吸着し効果がなくなることがあります。
  • 色素剤及びフラン剤は光により分解される為、遮光します。

観賞魚用治療薬一覧

薬品名 効能・効果 薬効期間(日) 色素沈着 遮光 水草
グリーンF 白点病、水生菌症、細菌感染症の治療と予防 5~7 あり ×
ニューグリーンF 白点病、水生菌症、スレ傷、並びに細菌感染症の治療と予防 5~7 あり ×
グリーンFリキッド 白点病、水生菌症、スレ傷 5~7 あり ×
メチレンブルー水溶液 白点病、水生菌症 5~7 あり ×
グリーンFクリアー 白点病の治療 10~14
アグテン 白点病、水カビ病の治療 2~3 あり
グリーンFゴールド 細菌感染症(皮膚炎、尾ぐされ病等)の治療 5~7 ×
グリーンFゴールドリキッド 細菌感染症(穴あき病)の治療 10~14
観パラD(パラザンD) 細菌感染症(穴あき病)の治療 10~14
エルバージュエース 細菌感染症(皮膚炎、穴あき病、尾ぐされ病等)の治療 3~5 ×
リフィッシュ ウオジラミ、イカリムシの駆除並びに細菌感染症の治療 10~14 ×



塩水浴について

当方の塩水浴の方法と、淡水魚の塩水浴についての考察を記載します。
実際に塩水浴を行うにあたっては、飼育者の判断と責任において実施して下さい。
本当に塩水浴で良いのか?
本水槽から隔離すべきか?
塩水浴の方法
本水槽への戻し方
塩の種類と濃度と期間

本当に塩水浴で良いのか?
ある程度、病気の原因が特定できている場合は、素直に、魚病薬による薬浴を行った方が良いと考えます。と言うのは、確かに、塩水浴によって弱った魚が元気を取り戻す効果を実感しておりますが、既に発病してしまった症状に対しては、治癒するまでに時間が掛かり過ぎると感じております。また、治癒に時間が掛る為に、他の病気を併発する可能性があります。細菌性の病気で、その傾向を強く感じます。
当方が塩水浴を行うのは、以下の場合です。

  • 新しく購入した観賞魚のトリートメントを行う場合。
  • 明らかに、具合が悪そうだが、原因が特定できない場合。
  • ナマズの仲間等の魚病薬が使えない魚種が病気に掛った場合。
  • 病状に適した魚病薬が手元にない場合。

本水槽から隔離すべきか?
隔離すべきと考えます。
塩水浴中に病状が悪化し、魚病薬の投与が必要になる可能性や、塩水浴のみの場合でも、本水槽と隔離水槽では使う塩の量がかなり違ってくると思われます。
一般に、塩水浴は0.5%以上の濃度で行います。1Lあたり、5gの塩を投入しますが、一般的な60cm水槽だと塩300gを投入する事になります。なお、塩水浴中も水換えは行いますので、その都度、追加する事になります。また、水草を栽培しているならば、塩は水草を枯らします。
全ての飼育魚に対して、塩水浴を行う場合、水草の方を隔離すればよさそうですが、一度、根の張った水草を抜くという行為は、水草にもダメージを与えますし、底砂の巻き上げで、細菌をばら撒く事になりかねません。
ですが、水槽をリセットし、再度立ち上げるつもりならば、この限りではありません。

塩水浴の方法
塩水浴のやり方を記述します。0.5%濃度の塩水浴手順は以下の通りです。

  • 隔離用プラケースに本水槽の飼育水を1.5Lいれ、エアーポンプ等でエアレーションを行います。
  • 対象となる飼育魚をプラケースに移します。この時、極力、網は使わず、柄杓(ひしゃく)や、掬い桶等で飼育魚と水を一緒に掬い上げます。
  • よく洗った、500mlのペットボトルに塩10gを入れ、水500mlを加え、よく振ります。
  • 500mlの塩水を30分に1回、4分の1づつ、プラケースに入れていきます。(塩水投入中に、飼育魚の様子がおかしくなった場合は即中止します。)

最初の水に飼育水を利用しているのは、急激な水質及び、水温変化を避ける為です。新たに、500mlの水を加えるので、4分の1水換えと同等になります。また、塩も一気に入れてしまうと、急激にアルカリ性に傾いてしまうので、500mlペットボトルで溶かしておいて、少しづつ入れます。
塩水浴中、以下の事に注意します。

  • 餌は極力与えない。
    数日(金魚に至っては数週間)餌を与えなくても餓死する事はありませんが、隔離前から絶食状態なのか等で変わってきます。食べれるようなら与えても良いが、ごく少量とし、残り餌は除去する。
  • 2日から3日に一度水換えをする。
    濾過が回っていない場合、アンモニアや亜硝酸が蓄積する事でも、飼育魚が弱るので、少量を頻繁に水換えする。この時、空の500mlペットボトルで、隔離プラケースから水を抜き、抜いた分の水と塩(水500ml、塩2.5g)を少しづつ加える。

本水槽への戻し方
水質ショックを避ける為、水合わせを行い本水槽に戻します。

  • 隔離プラケースから、水を抜く。(飼育魚が泳げる程度、水を残しておく)
  • 本水槽の水を隔離プラケースに少しづつ入れていく。(この時、点滴方式で行うと手軽です。)
  • 隔離プラケースが一杯になれば、水質は、ほぼ等しいと思われるので、飼育魚を本水槽に移す。

塩の種類と濃度と期間
種類に関しては、一般に売られている、食塩、粗塩で問題ありませんが、極力、塩化ナトリウムの純度が高い物が良いと思われます。味塩は論外ですが、粗塩でも、にがりや、ミネラル分が含まれる物がある為、少なからず水質に影響します。個人的には低濃度塩水浴では、浸透圧によって飼育魚自体の耐性を上げる事を目的としていると理解していますので、精製塩で十分と思われます。
1.0%を超える高濃度では、飼育魚自体にダメージを与える為、普通に飼育しているだけの方は行わない方がよいでしょう。高濃度塩水浴の場合、極短期間(数分とかのレベル)で行わなければならず、経験と判断力が問われます。逆にあまりに低濃度だと効果は期待できないと思われます。元々0.5%程度の塩水では、殺菌力は無いようです。
単に魚体に対する浸透圧を調整する事で、魚自身の耐性を上げようと言うのが目的ですから、あまりに低濃度では意味を為さないと思われます。
期間については、治るまでが基本ですが、たとえ低濃度塩水浴でも長引けば魚体に影響します。
途中、病気が特定でき、薬浴に切り替える場合は、塩水浴中の隔離ケースに直接投薬してはいけません。ニューグリーンFやグリーンFリキッド等は、メチレンブルーと塩の混合物で、それ自体に塩を多く含んでいます。ですので、塩水浴中の水槽に直接添加した場合、規定量の使用でも、塩分濃度の把握が難しくなります。